意識と思考の境界
思考は観察できるもので、本当の意味で思考が観察されはじめると、とても楽しい作業になるはずです。
これまで、「思考は意識の凝結した姿」というふうにお伝えしました。
つまり、思考そのものを観察することは、手がかかると言うか、骨の折れる作業ですが、意識を見つめ、意識を転換してゆくことで、思考されるものそのものが変化していることが分かります。
たとえば、「何かを食べたい」と思っているとします。
でも、体重を増やしたくない、ダイエットしたいという願望もあわせて持っているとしましょう。
こういう時、食べるか食べまいかで葛藤が生まれます。
この場合、葛藤している部分が意識であり、その葛藤がさまざまな思考を生んで、次から次へと葛藤を体験させているわけです。
苦しみの正体は、混乱した思考を生じさせる葛藤や選択する意識に原因があります。
なので簡単に言えば、苦悩から抜け出す唯一の方法は、苦悩を選択しない、これに尽きるわけです。
これが難しいと感じている人には、とても難しいことかもしれませんが、思考の仕組みに気がついた人には、目覚めの言葉にもなるでしょう。
いずれにしても、自分が思考していることを観察する側に立つことで、これまでとは違った生き方が始まるし、自分のバランスを回復させるために必要な措置が目に見えてきます。
思考することが大事でなくなるとき
私たちは思考をことのほか重要視しがちなのですが、現実には「思考」はすでに過去の産物だと気がつくと、意識への重要度が高まるのです。
これをシフトすると言い、人としての成り立ちが、多元的であることを実感できるようになります。
こうなったとき、悩んだり、苦しんだりする態度や思考を選択しなくなります。
つまり、苦悩というものが、思考の一形態でしかなく、自分の選択肢の一つであるという感覚が強くなるのです。
いわゆる「自分を俯瞰する」状態になります。
私たちはさまざまな経験を積むことで、自分にとってどういう状態がベストであるのかを自然と学び取るようになります。
しかし苦悩が意識を専有しているとき、目隠しされた状態なのでそれがほとんどわからないのです。
どうすれば意識にシフトできるのか?
では、どうすれば軸足を思考から意識にシフトできるのか。
おそらくこれが、プロセス的には一番の難関でしょう。
現に思考は、待ったなしであなたの脳をはじめとした、全ての細胞間で繰り広げられています。
ネガティブな思考を止めようとすればするほど、どんどんとあなたの意識に流れ込んでくるのです。
それを受け止めた意識がさらに新たな思考を顕在化させてゆきます。
ここで取るべきあなたの態度としては、「流れ込んでくる思考をせき止めない」ってことです。
現れたものはもうどうしようもない、すでに起こった(思考された)ことをためこまず、流れてゆくに任せるわけです。
イメージとしては、ダムにたまった水を放流するようなものでしょう。
水門を空けてしまって、淀んだ水(ため込んだ思考や感情)を流してあげることです。
ダムの上から、放流されている様を見ているイメージで、自分にとって嫌だと感じる思考を流しだすのです。
言うのは簡単なのは分かっています。
でも思考を離れ、意識にシフトするには、それなりのチャレンジが欠かせません。
思考にいる状態だと気づいたら、すぐにシフトする、そんな習慣をつける意志が必要です。
やりはじめたら、難しくはないのです。
あなたの気分に合わない感覚、感情がしてきたら、そこで立ち止まって、大きく呼吸してください。
気分が落ち着くまで、ゆったりとした呼吸を繰り返すだけです。
とりあえず、この繰り返しをやってみると、嫌な思考からしだいに離れてゆくことが、実感できるでしょう。