時のレッスン 序章:時間との関係が、人生を決めている
「時間がない」「時間に追われている」「あっという間に1日が終わる」
気がつけば、そんなセリフが口ぐせになっていませんか?
朝はバタバタ、昼はドタバタ、夜はグッタリ……気づけばまた1日が終わってる。
あれ、もう5月?ついこの間、お正月じゃなかったっけ?
もしあなたが、そんな“時間の渦”に巻き込まれているとしたら。
それは、あなたのせいでも能力のせいでもありません。
もしかしたら、わたしたちは──
「時間というものの本当の姿」を忘れてしまっただけかもしれません。
ちょっと視点を変えてみるだけで、時間はやわらかく、やさしく、
そして“味方”として流れ始めます。
そんな「時間との新しい付き合い方」を、これから少しずつ、
“風のレッスン”としてお届けしていきますね。
時間には、ふたつの顔がある
古代ギリシャには、時間の神が2柱存在しました。
- クロノス:時計で測れる、連続する時間。日付・時刻・スケジュール。
- カイロス:意味ある“いまこの瞬間”。感覚の中で広がる時間。
現代人の多くは、クロノスの時間にしがみつき、
「ちゃんとやらなきゃ」「間に合わなきゃ」「遅れないように」と、
未来に急かされながら、過去に引きずられて生きています。
でも、本来の時間とは、「いまここ」にしか存在しないものなのです。
時間が“変質”したのは、2011年だった
わたし自身が「時間感覚が決定的におかしくなった」と感じ始めたのは、
東日本大震災の2011年を境にした頃でした。
それ以前とは比べものにならないほど時間の流れが早くなり、
意味が追いつかず、ただ出来事だけが加速していく感覚。
けれどその裏で、呼吸は深まり、静けさは増し、
「時間の外側に立つような感覚」が、日常に少しずつ浸透していったのです。
それはたとえば──
- 時計を見ずに、ただ呼吸とともに在る静かなひととき
- 風が頬をなでたとき、「わたしは今、生きている」と実感する瞬間
- 音も思考も遠のいて、ただ“存在”として漂っているような感覚
そこでは、過去も未来も消えて、ただ“今”だけが満ちている。
それが「時間の外側に立つ」という感覚に、最も近い体験かもしれません。
コラム:時間感覚の二極化が始まっている
近年、精神性や価値観の二極化が語られることが多くなりましたが、
実はそれ以上に深く、静かに進んでいるのが「時間感覚の二極化」です。
- クロノス的な時間に縛られ、ますます忙しく、心がすり減っていく人々
- カイロス的な時間に目覚め、静けさと豊かさを感じながら生きる人々
同じ社会、同じ時代に生きていても、感じている“時間の質”がまったく違う。
この違いは、ほんの小さな呼吸の意識の差から始まります。
でも、その先に広がる世界はまるで別次元。
そして、これからはますます──
「どちらの時間を生きるか?」が、人生の深層を分ける時代になっていくでしょう。
感謝呼吸は、“時間”への感覚を回復する
呼吸は、時間と最も深くつながる行為です。
1回の呼吸は、まさに「今ここ」を感じる装置であり、
感謝呼吸を続けていくと、カイロス的な“ひとときの豊かさ”に気づけるようになります。
「いまを生きる」──その言葉が、頭ではなく身体にしみ込んできたとき、
時計の針は止まらなくても、時間に追われる感覚がすーっと消えていく。
この体感こそが、時のレッスンの入り口なのです。
「時のレッスン」という試み
この連載では、「時間」との関係を見直すことを通して、
人生の質を根本から整えるヒントを綴っていきます。
テーマは、タイムマネジメントではありません。
「どう生きるか」でもありません。
「どんな時間を生きるのか」──それを選びなおすための、小さな風のレッスンです。
さあ、あなたの時間を、もう一度“あなたの手”に取り戻していきましょう。
この連載では今後、「クロノス民」「カイロス民」という言葉をときどき使っていきます。
これは、優劣や上下ではなく、「どのような時間感覚でこの世界を生きているか」を示すためのイメージ上の表現です。
もちろん、クロノス的な時間にも素晴らしい側面があります。
社会の秩序を整えたり、計画性をもって物事を進めたり、
人と時間を共有して協力するうえでの“共通のものさし”として、非常に便利で実用的です。
また、クロノスのリズムに乗ることで、安心感や達成感を得やすいという一面もあります。
ただ、そこに“感覚”が伴わなくなると、
時間がただの「制限」や「圧力」になってしまうこともある。
時間に追われる、焦る、苦しむ・・。
クロノスの有用性が障害になるわけです。
だからこそ、カイロス的な感覚を取り戻すことは、
クロノスの時間さえも、より豊かに活かすことにつながっていくのです。
もしあなたが、少しでも“時間の外側”を感じたことがあるなら、
あるいは、そういう生き方に惹かれるなら──あなたはすでに、
カイロス感覚の認識者といえるかもしれません。
感謝呼吸を通して、だれもが自由にこの感覚へアクセスできる。
そんな時代が、もう始まっています。